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日本で一番東にある古本屋〈道草書房〉のブログです。 本やそれにまつわる色々についてのよもやま話です。






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みちくさ(道草書房店主)

Author:みちくさ(道草書房店主)
専門分野は、ミステリ・文学、それと郷土(北海道/根室)関係をちょこっと。
日本の片隅で細々と商いをしている、古雑誌をこよなく愛するおっちゃんです。



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【店主の読書ノート19】『BANANA FISH』(全19巻、吉田秋生著、別コミフラワーコミックス版)
bananafish


1973年、ベトナム。
ひとりのアメリカ兵が突如精神錯乱を起こし、銃を乱射する。
兵隊仲間のマックスが両膝を撃ち騒動は治まったが、そのとき兵士が漏らした「バナナフィッシュ」という言葉が、彼の胸に深く残った。

1985年、ニューヨーク。
下町の不良少年を仕切るアッシュは、銃で撃たれた男の死に際に立ち会う。
そのとき男が残した言葉が「バナナフィッシュ」
それは、彼の兄グリフがうわ言で繰り返すフレーズでもあった。

そう、グリフこそ12年前に乱射事件を起こした兵士だったのだ。

「バナナフィッシュ」の謎を巡る物語は、こうして幕を開けることになる―


少女マンガにくわしいワケではないですが、さすがにこれくらいメジャーな作品になると、名前ぐらいは知っていました。
なにせ全19巻(フラワーコミック版)ですからね。連載マンガというのは、人気があるうちは終らせでないで引っ張るものですから、巻数というのがある種の目安になります。その点、この『BANANA FISH』は実績十分。相当な人気を得ていたと云っていいでしょう。

で、買取りで入ってきたのをさいわいに、読んでみました。
すなおに面白かったです。
少女マンガ好きというのではない40過ぎのおっさんが言うのですから、間違いありません(^^)

たぶん作者は、おおまかな枠組み(「バナナフィッシュ」の正体および登場人物のキャラクターなど)とストーリイの流れだけを決めて、描き始めたのだと思います。
連載マンガの場合、どのくらいの長さになるのかは、読者(人気)次第のところがありますから、最初から細かいところまで全体像を煮詰めて物語を構築する、というのは無理なことです。むしろ、読者の反応や物語の進行具合を睨みつつ、方向性を決めていくくらいの“あそび”の部分がないと、こんなに長く続かないでしょう。

もちろん、物語のなかに「謎解き」が据えられているので、まったく行き当たりばったりというワケにはいきませんが。

実際読んでいくと、ストーリイの進行とともに登場人物が動き出し、それぞれの性格や行動様式が確立していくなかで、中心であったはずの「バナバフィッシュ」の比重は、どんどん軽くなっていきます。
反面、人間対人間の部分がクローズアップされていき、それに取って代わるようになります。

ひらたくいえば、アッシュと“パパ”・ディノ・ゴルツィネとの対決。
いわば、アッシュによる「父性の克服」
それと、
アッシュとエイジとの愛情です。
(アッシュもエイジも男ですが、エイジの立ち位置は、少女マンガにおけるヒロインそのものです。また、“愛情”といっても性的な意味ではなく、もっと精神的なものです。)

当初の構想では、「バナナフィッシュ」を巡る謎と、派手なアクションで展開する予定だったかも知れません。
しかし、主人公のアッシュやエイジらのキャラクターが、予想以上に成長していくなかで、そういったありきたりの方向では、収まりきれなくなったのではないかと思われます。

登場人物たちの成長に相応しい、もっと大きなテーマが物語の途中から要求されるようになり、こうしたストーリイ展開になったのではないか。そういう気がしています。

絵的に男性読者でも受け容れられると思いますし、派手な銃撃戦の割りにグロい場面もありません。そういった意味で、男女を問わず愉しめると思います。オススメ。

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