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日本で一番東にある古本屋〈道草書房〉のブログです。 本やそれにまつわる色々についてのよもやま話です。






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みちくさ(道草書房店主)

Author:みちくさ(道草書房店主)
専門分野は、ミステリ・文学、それと郷土(北海道/根室)関係をちょこっと。
日本の片隅で細々と商いをしている、古雑誌をこよなく愛するおっちゃんです。



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【店主の読書ノートその10】『めざせダウニング街10番地』(ジェフリー・アーチャー著、新潮文庫刊)
めざせダウニング街10番地


昨年夏の衆議院選挙前後のことだが、民主党の菅代表代行(当時)や小沢幹事長が、英国の議会制度をわざわざ視察しに行った。そこから垣間見えるのは、現政権が彼の国の制度を範としようとしているということ。実際、与党から政府へ入る議員数の大幅増や副大臣・政務官の活用などは、その実践といえる。

では、英国の議会制度とはどんなものか?

そこで思い出したのが本書。
翻訳刊行されたのが1985年で今から四半世紀前のものだが、出版された当時、興味深く読んだ記憶がある。

もちろん、議会制度について本格的に調べるつもりなら、当然、専門書にあたるべきである。
しかし、こっちは軽くさわりだけを知ればいいのである。
だったら、こうしたエンタテインメントで、十分好奇心は満たされる。

それで、この機会に再読してみようと探してみたのだが、モノがない。
どうやら、売ってしまったらしい。
ネットでチェックしてみると、すでに絶版になっていて、新刊では買えない。結局、古本屋で購入し読むこととなった。

1964年の英国下院の総選挙で、3人の新人議員が誕生した。
貴族の次男坊で近衛兵から政界へ進出した保守党所属チャールズ・ハンプトン。
中産階級から持ち前の知性と野心で上を目指す、これも保守党のサイモン・カースレイク。
そして、肉屋の息子で労働党から出馬したレイモンド・グールド。
この3名による、山あり谷ありの“英国政界出世すごろく”、というのが本書である。

オンナやカネなどの個人的問題や、相互の足の引っ張り合い、たびたび起こる政権交代などを盛り込みながら、実際の英国戦後政治史をなぞって物語は進行していく。
この作者特有の品のなさというか格調の低さも、ある意味、生臭さを消すのに役立っている。

そうした流れの中で、英国の議会政治というものの実態が描かれていくのだが、その点、ちょっと本邦の『小説吉田学校』をほうふつとさせる。
もっとも、実録小説である『小説吉田学校』と違い、『ダウニング街―』は歴史的事実を背景にしているが、完全なフィクションであるけどね。

どっちにしろ、読み物として面白いので、そんなことはどうでもいい。


本書にみる英国政治についてだが、もちろん、エンタテインメントとして誇張されている部分はあるだろうし、かつまた60年代から80年代までという時代背景の違いも考慮しなければならない。しかし、作者自身が、議員でいた時期もあったヒトではあるし、勘どころは押さえてある、とみていいと思う。

そんな感じで、少し日本と比較してみると―

1. 与党議員は大量に政府入りするが、1年生議員は新入りとして次の選挙で勝つのが最大の仕事という点。ここは日本と同じ。

2. 長い歴史を持つ議会というものは、独特のしきたりが形成されるものであり、それは英国でも日本でも同じだということ。そうした場で新入りが即戦力として活躍することは稀である、という現実と、それでも才能のある者は早いうちから頭角を現す、という事実。

3. 政権就任時は、官僚に囲まれてスケジュールをこなすのに精一杯で、現実への対応が第一となる。理論的に政策をじっくり練るのは野党時代で、この期間の過ごし方が次期政権就任時に返ってくる、ということ。この英国の教訓は、日本の野党も学ぶべきであろう。

4. 英国でも選挙区で有権者からの陳情を聞くのが、議員活動の重要な部分を占めている、ということ。日本では、こういうのを「どぶ板」と呼んで蔑視する風潮が最近あるが、事件は霞ヶ関で起こっているんじゃない、現場で起こっているんだ、というのを忘れてはならない。ただし、英国の地方自治制度については本書では分からないので、英国の中央と地方の関係をちゃんと知りたいのなら、本格的な専門書を読むべし。

5. 政治活動に金がかかるのは英国でも同じ。本書の主人公の一人、サイモンも企業献金を受け、その企業の顧問的立場に就任する。そこでのカネの授受については、日本のリクルート事件とかなり近いものがあるのだが、英国では日本と違い、刑事事件の対象とはならない模様。なんとなく英国の政治制度の方が、日本より清潔なイメージがあった。しかし、ああいったこと(未公開株の譲渡)は、英国では合法みたいだ(日本が厳しすぎるのか?)。

6. 政治資金づくりであるが、与党にうまみのある日本と違い、あちらでは政権内にいるときは厳しく、野党や落選議員に対しての制限は相対的にゆるい(兼職規定など)。贈収賄などの汚職を防ぎつつ、次に備える軍資金作りには配慮する制度、といえるのではないか。

7. 議員に求められる能力のひとつに「演説」があり、それが拙い場合には、容赦なく野次が浴びせられる。一方、良い演説には、敵味方を超えて賞賛の拍手が贈られる(この点、フィクションならではの理想論かもしれない。)。野次に鍛えられ、演説力を磨いてこその議員である、という思想。つまり、汚い野次はむしろ必要、というのが英国流(フットボールにおけるブーイングと同じ発想だね。)。

8. 議員は、重鎮・ベテランから順に前に並び、下っ端は後方に置かれるのが英国で、日本はその逆。また、本会議主義の英国では、議員の誰もが論戦に加わるチャンスが与えられ、そこでの評価が、その後の党内出世に影響する。

9. 対して日本の場合、本会議主義ではなく委員会主義となっている。所属委員会においては新人議員も質問等に立てるはずであるし、実際そうしているのだと思う。しかし、TV中継や新聞論説では、本会議と予算委員会以外はほとんど採り上げないので、一般市民が議員の評価をするのがかなり難しいことになっている。

これ以外にも、日本と英国の議会制度に違いはあるはずだが、本書で読み取れるのは、こんなところ。どっちが良いとか悪いとかというものでもないが、今の政権の嗜好からして、知っていてソンはないと思い、ちょっと触れてみた。



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