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日本で一番東にある古本屋〈道草書房〉のブログです。 本やそれにまつわる色々についてのよもやま話です。






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みちくさ(道草書房店主)

Author:みちくさ(道草書房店主)
専門分野は、ミステリ・文学、それと郷土(北海道/根室)関係をちょこっと。
日本の片隅で細々と商いをしている、古雑誌をこよなく愛するおっちゃんです。



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【店主の読書ノート18】『三幕の殺人』(アガサ・クリスティー著、ハヤカワ・ポケット・ミステリ版)
三幕の殺人


引退した俳優チャールズ・カートライトが催したホーム・パーティーで、温厚で敵など誰もいない老牧師が毒を飲まされ死ぬ。動機も機会も分からないまま、事件は曖昧なまま忘れられようとしていた。
だが数ヵ月後、そのパーティーに出席していた医師ストレンジが、似たような状況で毒殺されるに及び、様相は一変する。
素人探偵気取りで調査のまね事をはじめた、チャールズと彼を慕う若い娘エッグ。
そして、第一の悲劇に居合わせたポアロもまた、この事件へと乗り出す―。


クリスティーの長編はほぼ読んでいますが、個人的にその中でも上位に入る作品だと思っています。再読してみて、改めて感服いたしました。

本書では連続殺人を扱っていますが、ふつう1→2→3と進むところが0→1→2なのが独自のアイディアで、その考えの発展として(殺人へと至る過程を描く)中期の作品群があるのかな、と思ったりもしました。

女史の作品の特長として、何気なくみえる言葉に、実はまったく違った意味があって、謎が解き明かされてから改めて読み返してみると、最初に考えていたのとは逆のことを示している、というのがあります。ミステリ用語で“レッド・ヘリング(にせのてがかり)”というのですが、クリスティー女史は、これの使い方が抜群に上手い作家なのです。
本書でもその長所が、遺憾なく発揮されていて興をそそります。
(謎解きに直結する事柄なので、ここにそれを例示できないのが残念。)

本格推理小説(謎解きミステリ)を手にとる場合、私も含めて人々は、もちろん謎解きをしながら読むわけです。しかし、クリスティーの小説の魅力は、それだけにあるのではありません。その愉しさは、むしろ再読のときにあると思うのです。

謎解きのために張り巡らした伏線の数々と、その張り方。それらを、「なるほど、この文章の本当の意味は、こういうことだったのか!」と感心しながら読む。それが、クリスティーのもうひとつの味わい方なのです。

着想の妙と考え抜いた構成が光る、アガサ・クリスティーらしい謎解きミステリの力作です。
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コメント

長篇と短編集、数冊読んだのみで、
あとは映画やテレビドラマ見てるだけですが、
クリスティ、お金が動機っていうのがけっこう多いのではないですか。

それから、作中、ちゃらちゃら騒ぐ女が犯人というのが何作かあるのではないでしょうか。
[2011/02/25 20:43] URL | スガ #BQKec/vg [ 編集 ]

Re: タイトルなし
コメントありがとうございます。

> 長篇と短編集、数冊読んだのみで、
> あとは映画やテレビドラマ見てるだけですが、
> クリスティ、お金が動機っていうのがけっこう多いのではないですか。

そうですね。基本的に恋愛がらみや遺産なんかが動機の作品が多いと思います。

> それから、作中、ちゃらちゃら騒ぐ女が犯人というのが何作かあるのではないでしょうか。

印象としては、むしろ○○○が多い気がします。
実際のところ、何冊か読めば犯人の傾向は分かりやすい作家かも知れません。

ただし、謎解き以外にも面白さがある作家なので、読んで損はないと思いますヨ。
[2011/02/25 22:58] URL | みちくさ(道草書房店主) #- [ 編集 ]


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