fc2ブログ
日本で一番東にある古本屋〈道草書房〉のブログです。 本やそれにまつわる色々についてのよもやま話です。






プロフィール

みちくさ(道草書房店主)

Author:みちくさ(道草書房店主)
専門分野は、ミステリ・文学、それと郷土(北海道/根室)関係をちょこっと。
日本の片隅で細々と商いをしている、古雑誌をこよなく愛するおっちゃんです。



最新記事



最新コメント



最新トラックバック



月別アーカイブ



カテゴリ



カレンダー

03 | 2024/04 | 05
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 - - - -



FC2カウンター



検索フォーム



RSSリンクの表示



リンク

このブログをリンクに追加する



ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる



QRコード

QRコード



【店主の読書ノート20】『現代推理小説大系第8巻 短編名作集』(小酒井不木・海野十三・水谷準ほか著、講談社刊)
講談社現代推理小説大系8

一見、世間様の動きとは関係ないような古本業界ですが、どうしてどうして、それなりにニッポン経済とつながってなくはありません。
まあ、「つながっている」ではなくて、「つながってないではない」という、微妙なニュアンスを使わざるを得ない。そんなささやかな「つながり」なんですが。

この十数年来、日本経済を悩ませているデフレ現象。どの業界もこれに悩まされている訳ですが、古本業界も例外ではございません。

とくに全集物なんかは、マトモに影響を受けました。諸先輩方や業界誌なんかによりますと、一部の例外を除いて、ピーク時の半値や3分の1が当り前みたいです。

たしかに全集物は、「大きくて」、「重くて」、「場所をとる」という物理的条件が、
現代の「コンパクトで」、「軽く」、「スペースを無駄にしない」という生活に合っていません。
それが、価格の低下を招いている主因なのだと思います。

たしかに全集物は、物質としては今のライフスタイルに合ってはいません。
けれど、そういった不利を補うだけの内容があるという側面を見逃しては、イケナイ、と思うのであります。

としての全集の特長としては、「充実した注釈・解説・解題と詳細な資料」が、まず挙げられます。
また、単行本や文庫になっていない作品や文章が、全集には収録されている、というのもあります。全集でしかお目にかかれない―或いは入手しやすい―作品というのも存外あります。それに、活字も一般的に文庫などより大きく見やすかったりもします。

この講談社による『現代推理小説大系』も、そんな全集のひとつです。

ここでは、第8巻『短編名作集』を採り上げますが、他の巻にも現在では入手しにくい長編が、いくつも収録されております。

さて中身ですが、
本巻には、国産創作探偵小説の初期から昭和30年代までの23短編が収録されております。
日影丈吉の「かむなぎうた」や高城高の「ラ・クカラチャ」といった名作から他では読むことの出来ないものまで、粒揃いのセレクションです。

最近の出版事情では短編集は売れませんから、有名短編といえどそう手軽に読むことが出来ません。
そういったなかでこういった全集物の短編集は、1冊でバラエティに富んだ多くの名作・傑作・知られざる作品を読めるお得な商品だったりするのです。

本書から店主サトーが、個人的な好みで5つ挙げるとすると―

羽志主水「監獄部屋」…北見のタコ部屋を舞台にした、大正末期のちょっとプロレタリア臭のする短編。文章は粗いが時代が感じられる。オチは、現代の眼ではストレートすぎるかもしれないが、当時はけっこうショッキングだったのでは。

水谷準「おーそれみを」…久生十蘭・地味井平造など、函館中学出身の探偵作家に共通するのは、根底に流れるロマンティシズムだと思う。この作品なんかもそう。あらすじだけ書くと、(昭和初期の科学知識なんかを考慮に入れても)なんだこりゃ、となるかもしれない。けれど読んでみると、その甘酸っぱさが、いい味をかもし出しています。作者の故郷、函館が舞台です。

渡辺温「可哀そうな姉」…聾唖者の姉と彼女に育てられた弟の物語。姉の庇護から離れ、自立しようとする弟による一人称一視点による短編。いろんな意味で本当に姉が「可哀そう」に思えてくるお話。

日影丈吉「かむなぎうた」…東京生れの少年が、母を亡くし父の故郷へ引きあげてきた。その少年が大きくなり、幼い日を回想するという構成のストーリイ。子供の目に映った村の生活の描写が見事。夢と現実が混然となった好短編。

高城高「ラ・クカラチャ」…仙台を舞台に、社会の底辺で蠢く男女を描いた作品。気だるい夏の昼下がりの雰囲気がよく出ている。カメラ・アイで捉えた情景描写と行動、それに会話で構成された硬質な文体。国産ハードボイルド初期の傑作。

ちなみに、掲載されている21名のうち、5人が北海道生まれ及び北海道育ちであり、これに一時期北海道に住んでいた加田伶太郎(福永武彦)を加えると、ジツに6人が北海道に縁があるということになります。(次に多いのは、愛知・大阪・東京出身の3人。)
これは、国産探偵小説がどういった人びとによって創られていったかを考えるうえで、ちょっと頭の隅に入れておいたほうがいい事柄です。

【道草書房HP】http://www18.ocn.ne.jp/~michiksa/
【道草書房古書目録当該ページ】http://www18.ocn.ne.jp/~michiksa/il02-2a.html
スポンサーサイト





コメント

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する


トラックバック
トラックバック URL
http://michikusabooks.blog108.fc2.com/tb.php/82-c8dae5e0
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)